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世界のORC市場動向:産業排熱・地熱発電向け導入が加速

主要市場インサイト(有機ランキンサイクル市場)

フォーチュン・ビジネス・インサイトによると世界の有機ランキンサイクル(ORC)市場規模は2024年に8億4,077万米ドルと評価され、 2025年には8億8,735万米ドル、2032年には12億5,486万米ドルへ成長する見込みです。 予測期間中のCAGRは5.08%を示しています。アジア太平洋地域は2024年に41.08%の市場シェアを占め、市場を主導しました。

有機ランキンサイクル(ORC)は、地熱、バイオマス、産業廃熱など低温熱源を有効活用して発電を行う技術です。 特に低〜中規模発電に適しており、未利用エネルギー活用の促進と温室効果ガス削減を同時に実現する技術として注目されています。

ORC業界の主要企業であるOrmat Technologiesは、地熱発電と廃熱回収分野を中心に、 独自の「ORMAT® エネルギーコンバーター(OEC)」に基づく高効率再生可能エネルギーソリューションを提供しています。

日本の有機ランキンサイクル(ORC)市場インサイト

日本では脱炭素、再エネ導入拡大、未利用熱源の活用需要を背景に、 地熱・バイオマス・廃熱回収発電へのORC技術採用が加速しています。 低温熱源の活用効率向上、CO₂削減、設備稼働の高信頼化を実現する技術として評価されており、 日本市場ではシステム効率化・制御技術の高度化が重要な成長テーマとなっています。

市場動向

市場推進要因

再生可能エネルギー需要の増加

地球温暖化対策と化石燃料依存低減の世界的潮流により、 地熱・バイオマス・廃熱回収などの再生可能エネルギー源を活用できるORC技術への需要は着実に増加しています。 低温熱を電力へ変換できる点から、特に地熱発電で広く採用されています。

地熱エネルギー利用への関心拡大

米国、インドネシア、フィリピンなど地熱資源が豊富な地域ではORC導入が急速に拡大。 政府補助金・税制優遇などの政策支援が市場成長を後押ししています。

市場の制約要因

高い初期投資コスト

ORCシステム導入には設備・施工・運用の初期コストが大きく、 既存インフラとの統合コストも負担となります。 特に予算制約のある新興国市場では導入障壁となる可能性があります。

市場機会

再生可能エネルギー技術の普及拡大

低温熱源の有効活用、温室効果ガス削減、廃熱回収による燃料削減など、 ORCはグリーンエネルギー政策に合致する技術として世界的に導入が進む見込みです。 政府の脱炭素化政策により長期的な市場拡大が期待されます。

市場の課題

技術認知度の不足

一部の産業ではORCのメリットが十分理解されておらず、特に中小企業は技術知識や導入資金が不足し、 廃熱回収や再エネ発電における潜在的メリットが活かされていません。 政策支援強化が市場拡大の鍵となります。

有機ランキンサイクル市場の動向

技術進歩が市場成長を加速させています。2023年にはSalgenx社がORCを統合した新型ヒートポンプを発表し、 海水淡水化プロセスの省エネ化に寄与する技術として業界の注目を集めました。 政府によるエネルギー効率向上支援も市場発展を後押ししています。

COVID-19の影響

パンデミックによりサプライチェーンの混乱、プロジェクト開発遅延が発生し、市場成長が一時停滞しました。 しかし地熱発電容量は増加を維持し、市場の長期トレンドは堅調に推移しています。

セグメント分析(熱源別)

  • 地熱エネルギー(市場を支配)

ORCの低温熱源利用能力により、地熱プロジェクトでの採用が拡大。 2024年には1億5,579万米ドルの市場シェアを獲得しました。

  • 廃熱回収

産業プロセスの廃熱を電力へ変換する需要が増加し、省エネ・コスト削減の観点から導入が進んでいます。

  • バイオマス/その他

バイオマス燃焼熱の回収や未利用熱源活用で需要が拡大しています。

サンプルPDFはこちら:https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/問い合わせ/リクエスト-サンプル-pdf/オーガニックランキンサイクル市場-111817

地域別展望

アジア太平洋(最大市場)

2024年市場規模は3億4546万米ドル。工業化とエネルギー需要増加によりORC需要が急拡大。 フィリピンは2025年に1億1345万米ドル、ニュージーランドは6033万米ドルへ成長見込み。

インドネシア

地熱発電容量は2023年時点で2,500MW。2025年市場規模は1億6,582万米ドルへ拡大見込み。

北米

2025年市場規模は1億5,579万米ドル。地熱・廃熱回収投資の増加と政府の再エネ支援策が市場成長を加速。

米国

地熱設備容量は2,679MW(2023年)。2025年市場は1億5,544万米ドルへ拡大。 DOEは地熱プロジェクト支援に3,100万米ドル投入。

欧州

イタリアとドイツが市場を主導。イタリアは2025年に4,421万米ドル規模へ成長。 EUのネットゼロ政策が導入を後押し。

ラテンアメリカ

2025年市場規模は1億903万米ドル。地熱開発の潜在力が高く、投資拡大が成長を支援。

中東・アフリカ

2025年市場規模1億5,695万米ドル。トルコとケニアの地熱資源が市場成長の中心。

主要企業

  • Ormat Technologies(米国)
  • Turboden S.p.A(イタリア)
  • Calnetix Technologies(米国)
  • Exergy International(イタリア)
  • ENOGIA(フランス)
  • Triogen(オランダ)
  • Kaishan USA(米国)
  • Dürr Group(ドイツ)
  • 加賀電子(日本)
  • Orcan Energy(ドイツ)

主な業界動向

  • 2024年10月:Turboden、サウジアラビア初の13MWe ORCプラントを発表
  • 2024年2月:Orcan Energy、ドイツで生産拠点を拡大
  • 2024年1月:Turboden、19MW ORCシステムの設計契約を獲得
  • 2023年5月:Turboden、トルコの木材工場へ13.6MWe ORCを2基納入
  • 2022年9月:三菱重工、最新WHR-ORC技術を発表

レポート内容

本レポートは市場規模、成長要因、制約、セグメント評価、地域分析、主要企業、技術動向を包括的に評価し、 有機ランキンサイクル市場の現状と将来見通しを詳細にまとめています。

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