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世界のバッテリー・ストレージ用インバータ市場動向:系統安定化ニーズと高効率化の進展

主要市場インサイト(バッテリーストレージインバーター市場)

フォーチュン・ビジネス・インサイトによると世界のバッテリーストレージインバーター市場規模は2024年に75億9,000万米ドルと評価され、 2025年には84億5,000万米ドル、2032年には153億2,000万米ドルに達すると予測されています。 予測期間中のCAGRは8.87%です。アジア太平洋地域は2024年に57.31%の市場シェアを占め、蓄電池用インバーター市場を支配しました。

蓄電池用インバーターは再生可能エネルギーシステムにおける重要コンポーネントであり、 直流(DC)と交流(AC)の双方向変換を担うことで、蓄えた電力の有効利用やエネルギー供給の安定化を実現します。 需要ピーク時の電力放出、再エネ余剰電力の蓄電、配電網への統合などに不可欠な技術です。

日本のバッテリーストレージインバーター市場インサイト

日本市場では再生可能エネルギー導入拡大、電力安定化ニーズの増加を背景にインバーター需要が急拡大しています。 高効率・高信頼性のインバーターは電力変換効率と運用コスト削減に大きく寄与。 日本企業は海外規制や技術トレンドを参考に製品開発を強化し、競争力向上と新規事業創出に取り組むことで、 持続可能なエネルギー供給に貢献しています。

市場動向

市場推進要因

再生可能エネルギー導入拡大

気候変動対策の強化により再エネ導入が世界的に加速。太陽光や風力の間欠性を補う蓄電システムの重要性が高まり、 インバーター需要が急増しています。EUでは2023年の最終エネルギー消費に占める再エネ比率が24.1%に達し、 2030年目標42.5%に向け導入拡大が続く見通しです。

政府政策と補助金による導入支援

各国政府は補助金・税制優遇・規制緩和により再エネ・蓄電設備導入を推進。 中国は2024年に10億米ドルの再生可能エネルギー補助金を発表し、 太陽光・風力・蓄電システムの普及を強力に後押ししています。

市場の制約要因

初期コストの高さ

インバーター本体、蓄電池、設置、インフラ統合コストが高く、住宅・中小規模商業ユーザーにとって大きな導入障壁となっています。 高性能部品や複雑な電力電子設計の必要性がコスト上昇の要因です。

市場機会

電力系統の近代化

送電網の高度化が世界的に進む中、インバーターは双方向電力制御、需給バランス調整の要となり、 再エネ普及と共に市場機会が急増しています。ドイツの「2030年電力網開発計画」など、 各国のネットワーク最適化政策が市場成長を後押しします。

市場の課題

再生可能エネルギーの変動性

太陽光・風力発電は自然条件に左右され出力が変動します。 この不安定なDC電力を安定したAC電力へ変換するインバーターには高度な制御技術が必須であり、 電圧変動・高調波・系統不安定化のリスクが市場発展の課題となっています。

蓄電池用インバーター市場の動向

エネルギー自立への需要増加が主要トレンドとなり、企業・家庭・遠隔地における自家消費志向が拡大。 例として、2024年にジャガー・ランドローバーが英国における再エネ+蓄電設備プロジェクトを発表し、 最大120MW規模で地域電力需要の25%以上を賄う計画を示しました。

COVID-19の影響

サプライチェーン混乱、工場停止、部材不足によりインバーター製造と納期が遅延。 再エネ・蓄電プロジェクトも延期が相次ぎ、短期的需要に影響しました。

セグメント分析

  • タイプ別
  • 三相電力(2025年シェア:57.90% – 産業・商業・ユーティリティ規模に最適で最大セグメント
  • 単相電力 – 住宅・小規模用途で急成長、CAGR 8.35%
  • エンドユーザー別
  • 公益事業部門(2025年シェア:55.98% – 再エネ統合、周波数調整、ピーク管理により最大市場
  • 住宅 – 太陽光+蓄電池導入拡大により最も急成長
  • 商業・産業 – 企業の省エネ・BCP対策で需要増加

サンプルPDFはこちら:https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/問い合わせ/リクエスト-サンプル-pdf/バッテリーストレージインバーター市場-111835%20%20

地域別展望

アジア太平洋(APAC

2024年市場規模43億5000万米ドルで最大地域。再エネ投資額は2022年に5,320億米ドルと世界65%を占め、 2030年には1.3兆米ドルへ倍増予測。日本は2025年に9億9,000万米ドル、韓国は3億8,000万米ドルへ成長見込み。

中国

再エネ導入量が世界最大規模。2023年の太陽光発電導入量は前年の世界全体に匹敵。 市場規模は2025年に29億4,000万米ドルへ到達見込み。

北米

2025年市場規模18億6,000万米ドルで第2位。 米国は税額控除(ITC)、インフレ抑制法(IRA)などの政策が追い風。

米国

クリーンエネルギー投資73億米ドル(2024年)など政策支援が強力。 2025年市場規模18億2,000万米ドル

欧州

2025年市場規模14億1,000万米ドル。EU発電量の50%が再エネに達し、 インバーター需要が急拡大。ドイツは3億4,000万米ドル、イタリア2億3,000万米ドル

その他地域

中東・アフリカ・ラテンアメリカの再エネ導入が加速。 特にブラジルでは発電の91%がクリーンエネルギー。 市場は2025年に2億9,000万米ドルへ成長。

主要業界プレイヤー

  • ABB(スイス)
  • Wind & Sun Ltd(英国)
  • 日立製作所(日本)
  • Eaton(アイルランド)
  • SMA Solar Technology(ドイツ)
  • KACO(ドイツ)
  • Bosch(ドイツ)
  • Ginlong Technologies(中国)
  • SUNGROW(中国)
  • Dynapower(米国)

主要業界動向

  • 2024年11月:Deyeが住宅用2kWhハイブリッドESSを発表
  • 2024年9月:EPC Powerが新プラットフォーム「Mシステム」を発表
  • 2023年6月:Savant Systemsが家庭用蓄電システムを発売
  • 2023年10月:FIMERが5MVA双方向コンバーターをインドで発表
  • 2023年4月:Solisが南アフリカ向けS6ハイブリッドインバーターを発表

レポート概要

本レポートは市場規模、成長要因、制約、技術動向、地域別分析、競争環境を網羅し、 蓄電池用インバーター市場の全体像を詳細に評価しています。

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